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記事: 100%植物由来ダウンの初商品化 『Plant-Based Down 2030: FLARE』 メディア向け発表イベントレポート

100%植物由来ダウンの初商品化 『Plant-Based Down 2030: FLARE』 メディア向け発表イベントレポート

KAPOK KNOTはこの度、植物由来100%ダウン『Plant-Based Down 2030: FLARE』を発表いたしました。


7月7日(木)からオンラインにて抽選販売を開始。限定3着の販売で、ご購入される方にはセミオーダーでご用意いたします。


今回は抽選販売開始に先駆け、6/23(木)に行われたメディア発表トークイベントのレポートをお届けします。KAPOK KNOT代表の深井、デザイナーの満汐、そして素材をご提供いただいた東レグループ・プロジェクト“MOONRAKERS”代表の西田様をゲストにお呼びし、ファッションとプラントベースの未来について語り合う、白熱した内容になりました。

 

【目次】

・登壇者プロフィール

〜メディア向け発表イベント〜

・植物由来100%ダウン『Plant-Based Down 2030: FLARE』の発表

・植物由来100%のダウンを完成させるまでの苦労

・植物由来の素材がもたらすメリット

・植物由来100%×ファッションの未来

・まとめ

 

登壇者プロフィール

KAPOK JAPAN株式会社

代表取締役 深井 喜翔

2014年慶應義塾大学卒業後、ベンチャー不動産、大手繊維メーカーを経て、家業である創業75年のアパレルメーカー双葉商事株式会社に入社。現在の大量生産、大量廃棄を前提としたアパレル業界に疑問を持っていたところ、2018年末、カポックと出会い運命を確信。2020年1月よりKAPOK JAPANを設立。

 

KAPOK JAPAN株式会社

デザイナー / ブランドディレクター 満汐 国明


イタリアラグジュアリーブランドである「CoSTUME NATIONAL」、東コレブランド「EZUMi」にてチーフデザイナーとして勤務。退職後、渡米しファッションやフードを中心にアートディレクターとして活動したのち、サンフランシスコのUXデザイン会社btraxにてブランディングプランナーやコミュニケーションデザイナーを経験。現在は、KAPOK JAPANのCBOとしてブランドディレクター・ファッションデザイナーとして活動。

 

東レグループ ディプロモード株式会社

ゲスト:プロジェクト“MOONRAKERS”代表 西田 誠 様



1993年東レ入社。配属された原糸部隊で多くのヒット商品に携わり、その後ポリエステルフリースを使用した最終製品の社内ベンチャーに挑戦。2020年には「先端素材による未来のファッション」の創造をめざすD2Cプロジェクト“MOONRKAERS®(ムーンレイカーズ)”を立ち上げ、2022年4月、東レグループ内で同事業を推進するディプロモード株式会社設立。プロジェクト代表に就任。


植物由来100%ダウン『Plant-Based Down 2030: FLARE』の発表

深井)発表の前に、これまでのKAPOK KNOTについて少し振り返りたいと思います。KAPOK KNOTは、今年で設立3年となる木の実由来の素材「カポック」を使ったファッションブランドです。インドネシアに自生する「カポック」は従来のコットンの8分の1の軽さと吸湿発熱という機能を持ちながら、木を伐採することも動物を傷つける必要もないサステナブルな素材。

 

そんな「カポック」の魅力をアピールしていたのが、ブランド設立1年目でした。2年目は「Farm to Fashion」というサプライチェーンの話。原料の調達から商品がお客様のお手元に届くまで、誰がどのように考え、どのような形で製品を作り上げているかを把握し、自分たちの手でお客様にお届けする。そんな想いを込めたフレーズでブランドを説明していました。

 

3年目の今年、ブランドとして新たに掲げたコンセプトが“Blur the line”です。「Blur」(ブラー)という言葉は、英語で曖昧にする、ぼかすという意味を持ちます。例えば、都市と自然、生産者と消費者、ファッショナブルな洋服とサステナブルなもの作り。それぞれの境界線を曖昧にし、良いところを組み合わせてブランド作りをしていこうという新たなコンセプトです。

 

そしてこの新しいコンセプトのアイコンになっているのが、今日発表する植物由来100%ダウン『Plant-Based Down 2030: FLARE』です。商品名の「2030」は、「2030年にはプラントベース100%のダウンを誰でも気軽に手に取れる状態になっている」という未来を夢見て名付けました。

満汐)私からは『Plant-Based Down 2030: FLARE』を作る上で込めた想いやデザインについてご紹介します。KAPOK JAPANは「世界中にサステナブルで機能的な素材を届ける」というミッションを大切にしています。植物由来や環境に優しい素材にこだわり、昨年からはカーボンフットプリント(商品一着を作るのにどれだけ二酸化炭素が発生するかを表した数値)を計算し、商品タグに明示し始めました。

 

その結果、従来の羽毛を使ったダウンに比べ、カポックを使えば約10分の1程までカーボンフットプリントを減らせることに気づき、改めて植物由来の影響力の大きさに気づきました。中綿のカポック以外も植物由来のものに変えられないか、さまざまなチャレンジを重ね、一年ほど前に植物由来100%のトレンチコートが完成しました。

  

しかし、結果としてこのコートは大変重くなってしまいました。植物由来の素材は、どうしても従来の素材に比べて重みが出てしまうものも多く、商品として世に出すことは断念しました。

 

そんな時、とあるイベントで「日本橋×ファッション」のインスタレーションを行うことになり、東レさんと協業する機会をいただきました。そこでの繋がりから植物由来100%のダウンについてご相談していたところ、東レさんがナイロンと同様の強度を持つ植物由来の素材を完成させたと聞き、素材を提供していただく形で『Plant-Based Down 2030: FLARE』が生まれました。

 

形は普通のダウンというよりも、クラシックな装いにも合わせやすいドレスのようなデザインを目指しました。サステナブルという言葉がトレンド化する中で、「サステナブルでありファッションとしても鏡を見た時にワクワクできるようなものを作りたい」という想いをこのドレスにこめています。

 

表地は東レさん開発のバイオナイロン『エコディア®️N510』、袖部分の中綿にはカポックの綿が100%入っていて、身頃にはカポックとテンセルを混ぜたシート状の素材が入っています。

 

植物由来のアウターを作った経験のある工場さんがなく現状は大量生産ができないため、今回は限定3着、価格は28万円でご提供いたします。抽選販売という形で、当選した方には採寸を行いお客様に合わせたセミオーダーでご用意する予定です。

 

植物由来100%のダウンを完成させるまでの苦労

深井)満汐からも話があった通り、昨年一度植物由来100%のトレンチコートを作った時は、商品化すべきか非常に悩みました。普段、私たちは「機能」「デザイン」「サステナブル」という3つの指標でアイテムを採点し、商品化するかどうかを決めています。昨年のトレンチコートは「サステナブル」「デザイン」の点数は高かったものの、重くて機能面が少し劣ってしまうため、結局商品化しないという決断をしました。

 

今回は、ご縁があって東レさんの『エコディア®️N510』に出会い『Plant-Based Down 2030: FLARE』を商品化することができましたが、他にも植物由来素材っていうのはあるのでしょうか?

 

西田)植物由来のナイロンというのは元々ありましたが、『エコディア®️N510』ほど細い​​繊度(繊維や糸の太さ)でやっているところはほとんどありませんでした。従来のように石油で作れば細い​​繊度でも安定して生産できるのですが、純度が低い原料だと細い繊度で薄手の生地を作るのはなかなか難しい。そこを今回の「エコディア®️N510」では成し遂げられたと思っています。

 

深井)そうですよね。今回その東レさんの長年の開発の成果を商品に取り入れられたというのは光栄なことだと思っています。そして今回、デザインの力も身内ながら強く感じています。

 

満汐)快適で便利な洋服、というのは当たり前。その中にサステナブルな要素やファッション性という新しさがないとユーザーには取り入れられないと思っています。その点、今回の『Plant-Based Down 2030: FLARE』は本当に美しい商品に仕上げられたと思います。ちなみに、今回は生産までのスピードが早すぎて工場に依頼できず、最後の仕上げは僕が縫いました(笑)

 

西田)2022年1月に「エコディア®️N510」がリリースされて、商品がこの6月のタイミングで出るなんて、今までの東レではあり得なかったスピード感です。最先端素材に常にチャレンジしている会社ではありますが、その点は会社としても本当に驚いています。

 

植物由来の素材がもたらすメリット

深井)分かりやすいのは、先ほども出てきたカーボンフットプリントですよね。私たちも昨年、実際の商品のカーボンフットプリントを出すまで、どれぐらい環境負荷の低いものを作れているのか正直分からなかったんですよ。実際に出してみると、普通の羽毛のダウンなら大体300kg-CO2前後ほどなのに比べ、カポックは10分の1ほど。もし、全てのダウンがカポックに代わればそれは相当大きなインパクトになるのではないでしょうか。

それにカポックの場合は、吸湿発熱機能も羽毛のダウンに近く、軽量でもあるので、機能的な部分でも可能性を秘めていると思っています。

深井)ちなみに東レさんが植物由来ナイロンの開発を進め始めたのは、お客様からの要望だったのでしょうか?それとも自分たちで自主的に進めていたんですか?

 

西田)後者ですね。「エコはお金にならない」と言われていた時代が結構長かったので...でもここ最近、エコに関する技術開発の流れがきているのを感じます。東レは合成繊維メーカーなので石油由来の素材の開発に時間をかけてきましたが、最近自分たちでも不安に思うのは「石油はいつか枯渇する」ということ。その状況を見据えて、持続可能性のあるものに変えていかなければならないという使命感もあり研究開発を進めています。

 

深井)そうだったんですね!

植物由来のパワーという意味でいうと、私たちは1年間の自社の活動実績・結果をまとめたアニュアルレポートというものを発行し、その中で数値化しています。

先ほど、カポックを使うことでカーボンフットプリントが従来の10分の1程度に減ったという話がありましたが、年間の総量でいうと大体4tほど減らせました、という数値をレポート内で紹介しています。ただ、それに対してお客様からいただいたのは「世界的にみるとどれぐらいなんですか?」という質問でした。

 

そもそも、グローバルの二酸化炭素の排出量は330億トンと言われていて、その中でアパレル、ファッション業界は約10%を占めていると言われています。つまり、私たちが減らせているのは30億トン分の4トンという非常に少ない量です。では、私たちのやっていることに意味がないか?と言われたら絶対にそんなことはありません。

 

先ほど満汐が伝えた通り、動物由来や石油由来のものを植物由来のものに変えることで、10分の1程度になる。そんな選択肢があるということを世の中に伝えることにまず意味があると思っています。まずは私たちがカポックで実践し、他にももしかしたら麻や竹など、今改めて注目されている素材で他の人が実践してくれるかもしれない。そんな今後に向けた期待感のこもった数字だと捉えています。

 

植物由来100%×ファッションの未来

西田)今回のナイロンに続いて、合成繊維の王様であるポリエステルを100%植物由来で作りたいと思っています。それが出来上がれば、本当に持続可能性のある社会に貢献できると考えているからです。

今色々と開発を進めているなかで、正直10年以内には、全てがプラントベースに置き換わってもおかしくないのではないかと思っているところです。今でも「部分バイオ」と言われる一部が植物性でできた素材はご提供していますからね。

 

深井)私たちが今回の商品名に「2030」とつけているのと近しい感覚かもしれませんね!

 

普通、メディア向けの発表会って商品を売るための場かもしれませんが、私たちが販売するのは限定3着のみ。まずは「植物由来100%のダウンができましたよ!」と知ってもらうことに価値があると思ってやっています。植物由来100%の選択肢がある、ということを世の中に広げて、手軽に手に取れるような世界に変わっていってから、日々の選択も変わればいいのではないかと思っています。

 

満汐)デザイナー目線で言うと、やはりエコな素材はまだまだ選択肢が少ない状況です。リサイクルポリエステルよりも、バージンのポリエステルの方が耐久性が高いことが多いので、長く着てもらうことをサステナブルと捉えて、バージンポリエステルを使うこともあります。耐久性や撥水など機能面で優れたエコ素材が出てきたら、さらに可能性は広がっていくなと感じています。

 

今後は、もっとたくさんのお客様に届けられるプラントベース100%の商品を作っていきたいと考えています。ダウンの代替だからこそ、見た目もダウンらしい商品も作っていきたい。今回はまだ販売しませんが「Plant-Based Down 2030:SKELETON」という第二弾の商品がすでに出来上がっています。カポックが中に入っていることを見せるため、あえて透明な表地で作ったダウンらしい形のアウターです。

 

まとめ

満汐)今回発表した『Plant-Based Down 2030: FLARE』は、植物由来100%であるにもかかわらず、植物でできているとは気づかれないクオリティのものが完成したというのは一つの成果だと思っています。サステナブルとうたってしまうとどうしても土臭いものになりがちですが、東レさんの『エコディア®️N510』が大変薄い素材だったからこそ、デザインで選んでいただけるようなファッショナブルなアイテムが完成しました。



そして、カーボンフットプリントをまだまだ今後も減らしていけるという道筋が見えたということも二つ目の成果だと思います。この商品を世の中の人に広く知っていただくことで「植物由来100%という選択肢があるんだ」ということが伝わったら嬉しいです。

* * *

『Plant-Based Down 2030: FLARE』は、7/7(木)より抽選販売を開始します。

ご興味をお持ちいただけた方はぜひ、以下商品ページより詳細をご覧ください。

 

Plant-Based Down 2030: FLARE 商品ページ