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記事: カーボンニュートラル勉強会レポート・後編「日本企業の取り組み」

カーボンニュートラル勉強会レポート・後編「日本企業の取り組み」

CO2の排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」という考え方。ブランドとして脱炭素化に取り組むKAPOK KNOTは「カーボンニュートラル」についての理解を深めるため、銀座ショールーム「The Crafted」にゲストをお呼びして、勉強会を開催。その模様を前後編でお届けしています。

後編の今回は「日本企業のカーボンニュートラルに向けた取り組み」として、丸井グループの事例を伺いました。

前編はこちら

<目次(後編)>

・パネリストのご紹介
・丸井グループについて
・丸井の目指すサステナビリティ
・丸井のカーボンニュートラルへの取り組み
・ソーシャルインパクトを生み出すために

 

パネリストのご紹介

 

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この後編は、丸井グループ・村上さんからのお話がメインです。丸井グループのカード事業や人事部署などを経て、グループのサステナビリティ経営を支える「サステナビリティ部」にいらっしゃる村上さん。「具体的な企業の取り組み」についてご紹介いただきました。

 

丸井グループについて

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村上)丸井グループは今年で90年。リアル店舗を23店舗持ち、年間2億人のお客様に来店いただいています。事業としては、小売とフィンテック、そして未来投資という分野を展開していて、スタートアップへの投資も行なっています。

丸井の経営の根幹にあるのは、商品やサービスなどをお客さまと共に創る「共創」という考え方です。最近では、その「共創」の範囲を全てのステークホルダーに広げています。

 

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村上)ステークホルダーの中には「将来世代」も入ります。これが入ることでビジネスが長期的になり、これからの世代とともに商品やサービスを作り、未来・地球を守っていこうというサステナブルな話ができるようになったんです。

深井)「将来世代」が入っているの、すごいですよね!KAPOK KNOTでもブランドのミッション・ビジョンを作る時に参考にさせてもらいました。

村上)そうですね、丸井としては2016年に「ESG推進部」を立ち上げ主にCSRをやっていたところから、それをビジネスにするために2017年に「サステナビリティ部」という名前に変更。そこから、2050年世界はこうなっているよねという長期的な話ができるようになり、この「将来世代」の話が出てきました。

 

丸井の目指すサステナビリティ

村上)2019年に、30年ビジョンと長期計画をまとめた丸井グループビジョン2050を掲げました。 

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村上)2050年に向けて様々な格差や対立が増えていく状況を予想し、その状況に対しビジネスで調和を生み出していきたい、というのがこのビジョンです。

具体的には、ESGE=環境への配慮、S=社会的課題の解決、G=ガナバンスへの取り組み)をビジネスと一体となってやっていきたいと思っています。その中で特に私たちが大切にしているのは、以下の2つです。

 

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村上)「選択肢の提供」については、お客さまのサステナビリティに向けて何をしていいかわからない、という状態に対して、できるだけ選択肢を提供できる企業になりたいと思っています。今丸井は、自分たちで作ったり仕入れたりという事業展開をやめて、テナントさんから家賃をいただくという商売方法に変わってきています。だから各店舗の売り上げは関係なし。モノを売るのではなくサービスを提供してもらってもいいし、丸井をショールームとして使って後でネットで買ってもらうでもいい。だからこそ、KAPOK KNOTさんのようなD2C企業と今一緒にやっているんです。そうやって丸井がいろいろな選択肢を紹介できたら、お客様もチャレンジしやすいのではないか、と思っています。

 

丸井のカーボンニュートラルへの取り組み

深井)丸井さんは自分たちの本業と、解決策がしっかり一致していて分かりやすいですよね。では、今回のテーマでもあるカーボンニュートラルに関してはいかがでしょうか?

 

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村上)丸井グループが排出している温室効果ガスの数字を調べてみたら、上記の通り電力による排出が多いことがわかりました。お店だと、冷蔵庫や証明でかなり電気を使うんですよね。だからまずはここから取り組もうと思っています。

丸井は環境省の「RE100」という取り組みに参加し、2030年度までに自社で使う電力を全て再生可能エネルギーにすることを宣言しています。例えば新宿のマルイ本館は100%再エネを使用している状態で、すでに再エネ化は52%まで進んでいます。

この活動をビジネスとしてやっていくには、お客様も巻き込んでいきたい。そこで行っているのが「みんな電力」との協業です。個人宅の電力を再エネに切り替え、エポスカードで払えるようにする仕組みを作りました。約700万人のエポスカード会員のうち再エネ利用者数100万人を目指し、さらにインパクトの大きい温室効果ガス削減に取り組んでいきます。

深井)まさに、三方よしですね!ちなみに先ほど丸井さん計算したと言っていた「温室効果ガスの数字」。これについて蓑原さん、補足いただけますか?

蓑原)はい、ではスコープ3について説明しますね。

 

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蓑原)企業のCO2排出をスコープ123という視点で分けています。1は、工場や店舗などから出た「企業が直接排出したCO2」。2は、電気を使ったとき、熱を作ったときに出た「エネルギー利用に伴う間接排出」。3は1、2に当てはまらない「その他の間接排出」で、例えば製品を運ぶためのトラックが出すCO2や、販売した製品から出るCO2、処分するときに出るCO2、社員の通勤時に出るCO2など、多岐にわたります。

深井)KAPOK KNOTで計算した時も、12は出しやすいけど、3は店舗ごとに違ったり、配送の有無で変わったりとめちゃめちゃ苦労しました…。今、カーボンニュートラルを謳っている企業でも、1、2までしか出していないところが多いですよね。3の計算と削減が本当に大変なんだと思います。

村上)丸井でも1ヶ月ぐらいかけてみんなで計算しました。色々なビジネスがあるので大変で…。3も出しましたが、お客様が車で来た時のCO2も入ってしまうから「お店に来ないで」とも言えない。何かで相殺しなきゃいけないと考えていた時に、さっきの「みんな電力」を取り入れてもらってお客様が自宅のCO2を少なくすることを「スコープ4」として計算してみたらどうかという話になりました。

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村上)スコープ4は丸井が独自で考えた指標です。自社だけだと世の中に出している排出量は30トン程度。さらに大きなインパクトを出すためには、お客様にライフスタイルの変化を促し、排出量を減らすこと。それが私たちのすべきことだと気づいたんです。

今までもこれからもお客様と共創してきた丸井だからこそ、ビジネスを通じて一緒に社会課題を解決し「ソーシャルインパクト」を大きくしていきたいと考えています。

 

ソーシャルインパクトを生み出すために

村上)お客様とともに脱炭素化を目指すには、ソーシャルインパクトの見える化が大事だと思っています。例えば、エポスカードで商品を買ったり、旅行に行ったりした時。カーボンフットプリントがどれくらいかかっているかを分かるようにしてみる。そうすることで、お客様にとっての活動促進にもなるし、丸井グループのブランディングにもつながっていきます。

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ちなみにスウェーデンには、自分の出したCO2を見える化するカードがあって、上限を超えるとカードが利用できなくなってしまうという取り組みも。換算式が公開されているので、私たちもすぐに取り入れられる施策です。また、エポスポイントをサステナポイントみたいなものに変えて、サステナポイントは寄付や環境に良いことをするために使えるという取り組みもやれたらいいなと思っています。

 

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他にも、ビーガン事業を始めたり、カードの材料にエコ素材を使ったり。グループの中にたくさんの事業があるので、様々なところでお客様と共創していきたいです。

深井)改めて、スコープ4という考え方、わかりやすくて良いですよね。

村上)そうですね、スコープ1234で減らすみたいな。発信の仕方としては、自社で減らした分とお客様と一緒に減らした分を合わせて「これだけ減らせました」という出し方をしていきたいです。

ちなみに、会社の中期計画にも2050年ビジョンをさらにビジネスよりにして掲げています。

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2025年までにお客様と一緒に100万トン以上の温室効果ガスを削減していく。こういうインパクトを通じて、財務諸表を達成していきたいと思っています。

以上です。すみません「スコープ4」なんて新しい指標作っちゃって、蓑原さんに怒られちゃうかもしれません(笑)

蓑原)いいえ(笑)企業の独自の取り組みは積極的に採用すべきだと思います。むしろスタンダードにしていくために応援していきたいです。

深井)お二人ともありがとうございました。カーボンニュートラルについて、国が進めているというのは分かっていても、自分たちはどうやる?というところになかなか落とし込めないのが現状だったと思います。でも、丸井さんのように自分たちで指標を作ってコミットしていける。個人レベルでも、ブランドレベルでも実践して行けそうですね。

個人が日々そんな選択を考えながらやって行けたら、世の中変わっていくのではないでしょうか。