平原依文×KAPOK KNOT対談・後編「私とサステナビリティ」
今回は、世界201ヶ国のZ世代・ミレニアム世代の夢を集めた本『WE HAVE A DREAM 201カ国、202人の夢xSDGs』を編集された平原依文さんをお招きして、「私とサステナビリティ」というテーマでお話いただきました。
幼少期から活動的でグローバルな環境に飛び込んだ彼女の価値観の形成から、現在のサステナビリティに対する取り組み、今後の展望を深掘りつつ、KAPOK KNOTとの未来のコラボレーションまで、ボリュームたっぷりの対談となりました。
後編では依文さんが“教育”にフォーカスを当てるきっかけから、気になっているサステナビリティ、目指したいゴールなど、過去・現在・未来の依文さんのお話を一挙に伺い、最後にKAPOK KNOTとのコラボレーションについて考える内容となりました。
【目次】
・“教育”を考えるきっかけ
・気になっているサステナビリティ
・サステナビリティのゴール
・KAPOK KNOTとのコラボレーション
対談者プロフィール
平原 依文(ひらはら いぶん)
WORLD ROAD 共同代表
青年版ダボス会議 One Young World 日本代表
小学2年生から単身で中国、カナダ、メキシコ、スペインに留学。東日本大震災がきっかけで帰国し、早稲田大学国際教養学部に入学。新卒でジョンソン・エンド・ジョンソンに入社、デジタルマーケティングを担当。幅広い世代へのSDGs教育のため「地球を一つの学校にする」をミッションに掲げるWORLD ROADを設立。SDGs x 教育を軸に、一人ひとりが自分の軸を通じて輝ける、持続可能な社会のあり方を追求する。『WE HAVE A DREAM 201カ国202人の夢xSDGs』を2021年6月に出版。「境界線を溶かす」を夢として、多方面で活動している。
KAPOK JAPAN 代表 深井 喜翔(ふかい きしょう)
2014年慶應義塾大学卒業後、ベンチャー不動産、大手繊維メーカーを経て、家業である創業75年のアパレルメーカー双葉商事株式会社に入社。現在の大量生産、大量廃棄を前提としたアパレル業界に疑問を持っていたところ、2018年末、カポックと出会い運命を確信。KAPOK KNOTのブランド構想を始める。1日に10回以上「カポック」と発する自称カポック伝道師。
“教育”を考えるきっかけ
深井)色んな条件が重なったことで依文さんが体験されて、広がった世界があると思います。そこに再現性を持たせないと世の中にインパクトを与えていけないと思う中で、媒介が“教育”というのが僕の解釈なんですが、そのイメージで依文さんは“教育”を捉えてらっしゃるんですか?
平原)そうですね!そういう風に捉えています。きっかけはカナダに留学に行ったときに受けたライフ・プランニングという授業です。その授業のテーマは「高校卒業したら何をするのか」で、一人ずつプレゼンする形式のトップバッターが私でした。でも当時の私は何も言葉が出なくて、「高校卒業したら大学しかないじゃん!」って思ったんです。先生にそのままの考えを伝えると、「なんで大学なの?何のために大学に行くの?あなたにとっての大学とは?」と質問攻めにあいました。そこで、高校卒業した後の選択肢も大学以外でもよくて、自分の軸で人生を選んでいい、ということを学びました。
ライフ・プランニングの授業でクラスメートの話を聞いていると、色々な生き方、進路先があって、「教育で何を伝えるかで、こんな風に人が育ち、多様性ある人生が切り拓かれて行くんだ」と感じました。一方で、日本の友人と会うと、いつも受験に追われていました。人生みんな同じフェーズにいるのにもかかわらず、選択肢を自分で考えるのと、与えられているのでは全然違うのは何故だろうと感じました。だったら私は、自分で選択肢を考える方の教育を、しっかり展開したいなとその時決意しました。
この授業は卒業までずっと対話が続いて,答えはありませんがクラスメート達と問いを出し合い、お互いの人生を考え合いました。そこはお互いから学び合えるような環境だったので、同じような「教育のあり方」を日本でも展開したいなと思いました。
深井)これまでの依文さんの経験と、この先どういう世界を目指していきたいかを考えた時に、“教育”に注力することは、とてもリンクしていますよね。具体的に教育として取り組んでいる事例はありますか?
平原)はい、WORLD ROADは2本の柱で動いています。「地球を一つの学校にする」をミッションに、①教育コンテンツ開発と②SDGsコンサルティングを展開しております。よく教育とビジネスは切り離されて話されるのですが、私たちはビジネスも教育の一つだと考えています。
それこそ、KAPOK KNOTさんの商品を手に取り、商品の背景にはどんな物語があって、どのように社会課題に貢献しているのかを知る、商品から学べる教育もあると考えています。そのため、ビジネスセクターでは企業さんや地方自治体さん向けにSDGsコンサルティングをしています。
教育事業に関しては、小学校~大学の教育機関さんと一緒に、SDGsの授業カリキュラムの作成や、『WE HAVE A DREAM』もその一つと捉えているのですが、教材づくりを行っています。あとは、『WE HAVE A DREAM』に載っている方とオンラインで繋げて、授業をしてもらったりもしています。
深井)めちゃくちゃいいですね、それ!
平原)海外に行くことは誰にとってもハードルが高いことだと思うのですが、語学以上に「話しやすい、暮らしやすい」環境を作ってしまえば、その一歩は踏み出しやすくなると思っていて、講師の方にオンライン出演をお願いしています。英語が流暢ではない方もいるので、お互い知っている単語で対話してもらって、どんどん境界線を溶かしていくのが目的です。
深井)「境界線を溶かす」っていう言葉、よく使われていますね。それはどのような考えなのでしょうか?
平原)人生の軸であり、私の夢そのものですね。日本では家族のあり方の境界線、中国では国籍の境界線、カナダでは働き方の境界線、メキシコでは貧困の境界線など、自分自身が境界線に苦しめられてきた背景もあり、社会にはたくさんの境界線が存在することに気づきました。この境界線があるが故に一歩踏み出せない人がたくさんいて、そこを少しでもじっくり溶かしていくことが人生を懸けて取り組んでいきたいことです。
深井)なるほど。「境界線を溶かす」という言葉はやっぱり今大事なファクターだと思っていて、SDGsというと社会貢献とビジネスを分けて考えて、どちらか一方をやりましょうみたいな話だと、SDGsを達成できない。両方が持続可能な発展なので、ビジネスとしても成立しないといけないし、でないと成り立たなくなってしまうので、そういった意味でAかBかだけではない考え方は、今後本当に大事になってくると思います。
そのギャップの見つけ方が必要だと思っていて、境界線を溶かしやすい領域もあれば、このままじゃ難しいからアレンジが必要だよねという視点が必要な領域もあります。想いだけでなく、スキルやノウハウが必要な部分もあると思うので、そこは教育じゃないと乗り越えられないのではないかと思います。
平原)私もそう思います。ジレンマだらけだと思うんですよね。AかBかではなくて、AとBの「と」っていうのがすごく大事だと思っています。「か」になると、違うという前提になってしまうので、先ほど喜翔さんが仰っていた、一緒に何かできないか、という「と」が間にあると、お互い違う前提で、一緒になってできることがあるよねという思考に変えられないかなと思います。
深井)そうですよね。僕もソーシャルビジネスを勉強してきていて、皆ソーシャルグッドが好きなゼミにいました。その教授の言葉で考えさせられるなと思うことがあって、「今のビジネスを否定しているかもしれないけど、続いているビジネスは社会に必要だから続いている。だから、あなたが一方的に正しいと思っている言葉は、必ずしもそれだけが正しいとは限らない。」という言葉です。
続いている=社会に求められているという要素は評価しないといけないという部分も大事だと思います。極端に行くと、親世代・祖父母世代のやっていたことを、全て否定してしまいがちです。でもそれはダメだと思うし、自分も何年後かに否定される立場になる可能性を分かって発言しているのか?という感覚を、大学で学びました。なので、対立構造じゃない部分を見出すことが、SDGsや教育では大事だと思います。
平原)すごく共感します。その時代に合ったビジネスの在り方というものがやっぱりあって、今のZ世代・ミレニアム世代から批判を受けているビジネスも、当時の日本で考えると高度経済成長期が必要で、そうした方が人々は豊かになりました。その時の豊かさの定義がそこだったんです。
でも成長し続けてきた中で、今の消費者の目の前で起きていることは、環境問題や人権、ジェンダーを始めとするSDGsの問題になっているので、ビジネスもその生活者の声をしっかりと拾って、アップデートしなければいけないと思います。対立するのではなくて、どう変えていくかがポイントかなと思います。
気になっているサステナビリティ
深井)その中でもサステナビリティという大きな枠組みで考えた時、依文さんが気になっているトピックはありますか?
平原)最近で言うとやっぱり「ジェンダー」ですね。LGBT平等法が可決されなかったというのが大きいです。同性愛者の友人がいるのですが彼にはイギリスに長く付き合っている彼氏がいて「日本で結婚したい」と、LGBT平等法を待ち望んでいました。しかし、最終的にこの法律が可決されなかったため、イギリスで結婚することになりました。法律がパートナーシップの在り方を制限することは間違いだと思いますし、愛する人は愛する人であり、性別も、国も関係ないと思います。
深井)日本は性に関する取り扱いがセンシティブ過ぎて、中々取り上げられにくいですが、身近に当事者の方がいるかいないかで、大きく意識や考え方も変わりますよね。
平原)大きく変わると思います。身近にいたとしても「話しづらい」環境があって、法で結婚が認められていなくても、性別を変えられなくても、それを気軽に「話せる」環境があったら大分楽になると思うんです。そういった環境づくりを私たち一人ひとりが心がけることから始めるのが大事だと思います。
サステナビリティのゴール
深井)サステナビリティの中で達成していきたいと思っていることはありますか?
平原)SDGsの4番「質の高い教育をみんなに」と、17番の「パートナーシップで目標を達成しよう」です。
4番の教育に関しては、全てに紐づくところですが、教育機関さんや企業さんとの取り組みを通じて、国と国の境界線を溶かしていくことです。○○人だからではなく、○○さんだからという、人に焦点を置いた対話がどんどん生まれるといいなと思っています。
具体的な目標として、日本47都道府県の学校に対する『WE HAVE A DREAM』の配布数と授業数です。コロナが落ち着いたら、『WE HAVE A DREAM』を世界中に届けたいです。ゆくゆくは、本のプラットフォーム化も視野に入れております。
17番のパートナーシップに関しては、企業間同士のパートナーシップを増やしたいです。企業さんはどうしても自社の中で活動する傾向があります。でも、それには限界があって何か課題を解決しようと思ったら、自社だけではできないことも多い。同じ課題を解決したいと思っている企業さんはたくさんあるので、みんなで一緒に実践して、より大きなインパクトを創出することがSDGs成功の鍵であると考えています。
深井)つい同業他社とは対立構造はできがちで、中々難しい部分はありますが、オープンな形でコミュニケーションができるとより良いですよね。国と国の壁を無くして、パートナーシップが多く生まれたその先、100年経った世界がどんな世界だったら、より良い世の中になっていると思いますか?
平原)人が「枠」ではなく、「軸」で生きている世界ですね。何かに縛られて生きている世界ではなくて、肩書、性別、国籍や宗教などの縛りがない、個人として誰もが生きられる世界を作りたいです。
KAPOK KNOT×依文さんでできること
深井)KAPOK KNOTはカポックという素材から入っているブランドなんですけど、ブランドの発端としては、僕がアパレル事業を扱っている企業の後継ぎなんです。ただ、このままだと残っていけない、大量生産大量廃棄の一端を担っている自覚がありました。
そこを変えていきたいと考えた時、ただ後継ぎがD2Cブランド始めました、だけだと何も変わらないと思いました。素材から入って、教育コンテンツぐらいまで視座を高めるものじゃないと世の中を変えられない。そう思ってKAPOK KNOTを始めたんです。
ですので、そういう意味では起点が依文さんと近そうなので、色々なことが取り組めそうだなと思いながらお話を聞いていました。教育コンテンツの枠組みでお取組みできたらいいですかね。
平原)そうですね!ご一緒に学校で授業を行うのも良いですし、 “サステナブルキャンピング”をやりたいです。
友人と自給自足のキャップ場に足を運んだりするんですけど、実際に使っているものがサステナブルじゃない時もあって、罪悪感を感じることがあったんです。だったら全部本質的なものを使った完全サステナブルなツアーをやってみたいと思いました!
深井)めちゃめちゃいいですね。選択肢はたくさんあるけど、レジャー・アウトドアになると限られてしまうものもあると思っていて、でも今世の中で選択肢は増えてきているんです。実はカポックだけじゃなくて、マッシュルームのレザー、リンゴのレザー、竹を使った素材開発など世の中にはいろんな技術があります。ただ、消費者のベネフィットを考えるところまで落とし込まないと、なかなか商品化して売るのが難しい。
KAPOK KNOTはそのコミュニケーションが上手くできているからこそ、サステナブル×機能・デザイン性を兼ね備えた商品の開発ができています。その文脈で身に纏うものやキャップに持っていくものまで、配慮されたモノづくりができると思います。
平原)いいですね。是非何か一緒に取り組みたいですね!
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いかがだったでしょうか。
「私とサステナビリティ」というテーマで行った、平原依文さん×KAPOK KNOTの対談。
依文さんの小学生時代からのご経験を掘り下げつつ、現在の活動やサステナビリティについての考え方、更にはKAPOK KNOTとのコラボレーションまで、時間にして70分を超えるボリュームたっぷりの対談となりました。
私たちが暮らす地球のため、人のために、アクションを起こし続けている依文さんの今後の活動は勿論、KAPOK KNOTとのコラボレーションもぜひお楽しみに!