<いいパートナーの日・インタビュー企画> 祖父の経験と孫の新しい発想で、補い合う関係性【尾崎ななみさん】
KAPOK KNOTは、現代における「こころよい暮らし」を提案するブランドです。誰と一緒に過ごすのかが、こころよい暮らしを送るうえで大切なこと。多様性を“豊かさ”と捉えるようになり、パートナーのあり方も変わってきた昨今。11月22日「いい夫婦の日」という記念日を、11月8日「いいパートナーの日」にアップデートしたいと今回のインタビュー企画は始まりました。
第4回となる今回インタビューさせていただいたのは、三重・伊勢志摩発の真珠ブランド「SEVEN THREE.(セブンスリー)」の代表、尾崎ななみさん。半世紀以上も真珠養殖に携わるおじいさんの経験と、尾崎さんの新しい視点を掛け合わせて生まれたブランドです。家族であり、仕事のパートナーでもあるお爺さまとの関係性について、お話を伺いました。
聞き手は、当インタビュー企画の編集を担当しているほしゆきです。
おじいちゃんの真珠をブランディング
きっかけは「ミス伊勢志摩」
ほし:ななみさん、今日はよろしくお願いします。私がSEVEN THREE.の広報をお手伝いをしていることもあり、ブランドや真珠についてお話を聞くことは多いですが、今回は「お爺さまとの関係」ということで。あまりお爺さまとのお話を中心に聞くことはなかったので、楽しみです。
尾崎:よろしくお願いします。そうですよね!これまで、あまり深くお話ししていなかったかも。おじいちゃんは70年前から真珠の養殖を行なっていて、85歳になった今でも現役で真珠をつくっています。SEVEN THREE.は、おじいちゃんの真珠を中心に、伊勢志摩産あこや真珠のみを取り扱っているジュエリーブランドです。
ほし:真珠のブランドを立ち上げたいという気持ちは、ずっとあったんですか?
尾崎:いえ、まったくそんなことなくて(笑)。きっかけは、2013年に「ミス伊勢志摩」に選んでいただき、仕事で三重と東京を行き来するようになったことです。私は高校を出てから上京して、モデルやタレントの仕事をしていました。
頻繁に三重に帰るようになってから改めておじいちゃんの仕事現場を見て、「80歳を超えても養殖業を続けるのは本当にすごいことだな…」と。海に出て、貝を引き上げる作業ひとつでも、すごく力を使うんです。
※真珠を育てているあこや貝を船から引き上げている様子
尾崎:海の上で毎日仕事をしている姿を見て、養殖業を継ぐことはできないけれど、この真珠を広く届ける役割を担いたいと思うようになりました。
ほし:それまでは、お爺さまはどのように販売をしていたんですか?
尾崎:お客さんに自宅に来てもらって、自宅販売をしていました。オンラインで販売する予定もなかったんです。直接お客様に接客をできるのは強みでもあるのですが、もう少し広く真珠について伝えていきたいなぁと。
真珠は冠婚葬祭との繋がりが深く、特に20〜30代の方にはハードルの高い印象だと思います。だからこそ、ファッションを選ばず普段使いしやすいよう一粒使いでシンプルなジュエリーを作りました。今まで真珠に関心のなかった方に「真珠ってかわいい!」と思ってもらえるようなアップデートをしていきたいです。
バロックパールの愛称として生まれた「金魚真珠」
ほし:SEVEN THREE.は、真珠に尾ひれがついているフォルムが特徴的な「金魚真珠」を発売して以来、特に注目されていますよね。
尾崎:これもたまたまで、真珠の選定作業中に歪んだ形の真珠を見て「金魚っぽくてかわいいな」と思ったことがきっかけなんです。おじいちゃんからしてみると、丸くない真珠は売れないというのが当たり前だったみたいで、私がかわいいと言ってるのが不思議そうでした。「これがいいのか〜」って(笑)。
歪んだ形の真珠は「バロック(歪んだ)パール」と呼ばれていて、これまで流通されることがあまりなかったんです。
ほし:真珠と言えば、丸くて真白のイメージが強いですもんね…
尾崎:そうなんです。おじいちゃんも最初は、「本当に買ってもらえるの…?」と心配しているようでした。今はこんなに多くの方に興味を持っていただいて、本当にびっくりしています。
SEVEN THREE.のジュエリーは、長年のおじいちゃんの養殖技術と経験、真珠のクオリティを見極める「目」があったからこそ生まれています。はじめたばかりの頃、私は真珠の目利きが出来なかったので、家で正座しながら一人で選定して、おじいちゃんに添削してもらってました(笑)。
真珠って真円に見えても少し歪みがあるとか、真白に見えても絶妙に他の色が混じっていたりして、見極めるのがすごく難しいんです。
ほし:お爺さまの技術と、ななみさんの視点がお互いの足りない部分を補い合っているんですね……素敵だなぁ。
歪みのある真珠に名前をつけてジュエリーにするのは新しい取り組みだったと思いますが、真珠業界からはどんな反応がありましたか?
尾崎:業界の方からは「新しい発想で活動してくれて嬉しい」と連絡をいただいたので、とてもうれしかったです。業界内でお客様を取り合うようなアプローチではなく、今まで真珠に距離を感じていた方々との、距離を縮めていくブランドにしていきたいと思っています。
「真珠」を知らない人はいないけれど、養殖方法や、色や形に個性が現れるということまで詳しく知っている方はまだまだ少ない。だからこそ、真珠の背景まで丁寧に発信することを心がけています。
SEVEN THREE.は、“なるようになる”ブランド
ほし:SEVEN THREE.の今後について、お爺さまと話し合うことはあるんですか?
尾崎:う〜ん、そんなに話さないですね。SEVEN THREE.は、おじいちゃんの真珠があってこそのブランドなので、いつまで存続させるのかも決めていないんです。例えば5年後、まだ現役で養殖を続けているかは、本人にも私にもわからない。このブランドがおじいちゃんの負担になっては本末転倒ですし、あまり先のことは決めず、ビジョンもあえて掲げていません。
ただ、ジュエリーが売れるたびに「まだまだ元気でいないとなぁ〜!」と電話でよく話してくれるようになったんです。
ほし:わぁ…そうなんですね。お二人のストーリーを知ってSEVEN THREE.を好きになる方も多いと思うので、そのお客様の声がまたお爺さまの活力に繋がっているのは、すごく素敵な循環ですね。
尾崎:SEVEN THREE.が仕事のモチベーションになっているのを感じると、やっぱりすごく嬉しいですね。おじいちゃんの力になりたくて始めたブランドなので、その時の状況で何ができるかを考えればいいし、なるようになるかな〜と思っています(笑)。
私自身、数字を追うことがすごくストレスに感じてしまうタイプなので、そのスタンスでいられることに救われているんです。おじいちゃんが元気なうちは、新しい企画や挑戦ができるので、力みすぎずに引き続き一緒に楽しんでいきたいですね。
家族、友人、ビジネスパートナー
「感謝」でつくるこころよい関係性
※ななみさんが着用しているのは、KAPOK KNOTのエアーライトジャケット。普段から愛用してくださっています。
尾崎:おじいちゃんは人が良すぎて、ものすごく愛されるけどお金儲けが得意なタイプではないんです。そして私も、利益を第一優先する経営が得意なタイプではないと思っています。
ほし:ななみさんもですか?どうしてでしょう?
尾崎:おじいちゃんや家族と事業をしているからかな……「私だけが儲けたい」とは思ったことがなくて、みんながいい関係でいられたらいいなと思うんですよね。
私がここまでやってこれたのも周りの人たちに支えていただいたからで、そもそも私の身近には自分の利益だけを考えてる人がいなかったんですよね。
ありがたいご縁もあって今があるので、ビジネス以前にブランドに関わってくださるみなさんに「ありがとう」という感謝の気持ちを大切にするようにしています。
ほし:先日のポップアップイベントでも、尾崎さんに集まってくるお客さんからそんな人柄の良さが感じられました。
尾崎:ありがとうございます。
「気持ちの良い関係」を、大切にしていきたいとすごく思っていて。そういう意味でも、お金の面では生産者に対してはできる限り言い値で買い取るようにしています。
おじいちゃんを身近で見ていて生産者の苦労を知っているからこそ、生産者・販売者・消費者がWIN-WINになれるようなビジネスにしたい。大量生産・大量消費・低価格のフィールドではないからこそ、オリジナリティを守って、ジュエリーひとつひとつへの思いとストーリーを丁寧に伝えることを大切にしています。
今後は、そういったモノづくりが増えていくんじゃないかな、とも思うんです。
【プロフィール】
・尾崎ななみさん(SEVEN THREE.ディレクター)
三重県伊勢市出身。高校卒業後に東京へ上京しモデル・タレントとして活動後、企業のプロモーション企画・運営を行う会社を設立。株式会社サンブンノナナ代表取締役社長。2017年12月に首都圏で伊勢志摩の情報発信を担う観光大使「伊勢志摩アンバサダー」に就任し、現在も活動中。
SEVEN THREE.公式サイト
https://seventhree.jp/
尾崎ななみさんInstagram
https://www.instagram.com/nanami_ozaki_73/
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「お爺さまのお手伝いをしたい」という思いから始まったSEVEN THREE.は、利益よりも、人との繋がりや感謝の心を軸にしているブランドでした。家族を想う純粋な気持ちがあるからこそ、姿勢にブレがない。その誠実さがお客様にも伝わるからこそ、多くの人に愛されるのだなぁと感じました。
11月8日(いいパートナーの日)に重ねた、KAPOK KNOTのインタビュー連載。次回は、お母様と一緒に飛騨高山で宿を運営している娘さんに「親子のこころよい関係性」について伺います。お楽しみに。
取材・編集:ほしゆき
執筆:松本唯人
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