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記事: 「ファッションブランドが 商品のカーボンフットプリントを公開する意義」 〜KAPOK KNOT×Allbirds コラボイベントレポート〜

「ファッションブランドが 商品のカーボンフットプリントを公開する意義」 〜KAPOK KNOT×Allbirds コラボイベントレポート〜

世界第2位の環境汚染産業と言われるアパレル業界。業界全体としてサステナブルシフトが課題とされるなか、KAPOK KNOTでは、製造過程から廃棄に至るまでに排出される温室効果ガスの数値「カーボンフットプリント(CFP)」を算出しました。

生活者に身近な存在であるファッションブランドという立ち位置からCFPを発信することで、微力ながらCFPへの関心拡大に貢献できればと願い、全アイテムのCFP表示を開始しています。

計算する上で参考にしたのは、サンフランシスコ発のサステナブルなライフスタイルブランド「Allbirds(オールバーズ)」が公開した計算ツール。計算段階でもご協力いただいた同ブランドとのコラボイベントが、今回実現しました。

本記事では、2月10日(木)に行われたAllbirds日本法人代表 竹鼻圭一氏と、KAPOK KNOT代表 深井喜翔のトークイベントの模様をご紹介。世界が注目する脱炭素化に関わる最前線の内容を、ぜひお楽しみください。

 

【目次】

■登壇者プロフィール
■各ブランドの紹介

〜トークセッション〜
■企業がカーボンニュートラルに取り組む意義
■CFPを計算して見えたこと
■Allbirdsが計算ツールを公開した背景
■質疑応答

 

登壇者プロフィール

竹鼻圭一(たけはな けいいち)/Allbirds日本法人 代表 ※写真左

2019年9月よりオールバーズ合同会社 マネージングディレクター(日韓)。
Nike米国本社、アジア、欧州リージョン歴任。ユニクロ、Arc’teryxのアジア リージョン コマーシャルディレクターを経て現職。

 

深井喜翔(ふかい きしょう)/KAPOK JAPAN 代表

2014年慶應義塾大学卒業後、ベンチャー不動産、大手繊維メーカーを経て、家業である創業75年のアパレルメーカー双葉商事株式会社に入社。
現在の大量生産、大量廃棄を前提としたアパレル業界に疑問を持っていたところ、2018年末、カポックと出会い運命を確信。2020年1月よりKAPOK JAPANを設立。

 

各ブランドの紹介

【Allbirds】

竹鼻)Allbirdsが日本に上陸したのは、2020年の1月。一号店の原宿店をオープンし、その後コロナが広まるギリギリのタイミングでeコマースをスタートさせました。

ブランドのミッションは「より良いことを、より良い方法で」。パーパスは「ビジネスの力で、気候変動を逆転させる」ことです。気候変動をゼロにするのではなく、逆転させることを目的としています。

 

フィロソフィーとしては、サステナビリティ・デザイン・コンフォート(快適)が3つの柱で、特にサステナビリティが私たちの存在の根幹です。商品はもちろん、会社や店舗での電気の使い方、輸送方法まで全て仕事がサステナビリティに基づいています。

とは言っても、サステナビリティだけでものは買ってもらえませんので、デザインやコンフォートにも注力し、着て、履いてどれだけ気持ちが良いかということを大事にしています。

今回のイベントにつながる話をすると、Allbirdsは2019年からすでにカーボンニュートラルの会社です。商品だけでなく、企業活動において自分たちが出したカーボンを全てオフセットして、カーボンニュートラルを達成しています。

 

達成にあたっては、素材に石油由来のものをできるだけ使わないようにしていて、ニュージーランドのメリノウール、ユーカリの木、ブラジルのサトウキビの3つの素材を主に使い、地球環境負荷をできるだけなくしています。

 

CFPを表示することで、消費者が商品を購入する上での判断材料になってほしいと考えています。今回もKAPOK KNOTさんがCFPを明示することにより、消費者に自分たちが二酸化炭素削減に参加しているという意義を感じていただければなと思います。

 

【KAPOK KNOT】

深井)私は創業75年のアパレル企業の4代目という立場で、ビジネスを行っています。現在の大量生産・大量廃棄のアパレルのビジネスモデルをメーカーという立場で目の当たりにし、業界、地球規模の課題であることを知り、ブランドとして注力していくことを考えました。

 

ブランドコンセプトの「FARM TO FASHION」には、農園で素材がどのように育っているかというところから目を向け、服を作り届ける全ての工程で意志ある選択をしようという思いをこめています。成し遂げたいのは、消費者にも、生産者にも、地球環境にも無理のないサプライチェーン作り。どうやって実現するかを考えていた時、カポックという素材に出会いました。

カポックはコットンの8分の1の軽さで、吸湿発熱機能がありダウン並みの暖かさを実現できる。さらに、木の実の綿なので木の伐採が必要なく環境にも優しい。シート化できたことにより、従来のダウンの様なキルティングにする縛りもないということで、機能・デザイン・サステナブルの3拍子揃ったプロダクトができると思い、この素材を広めることを考えブランドを立ち上げました。

 

今回の算出では素材・製造・使用・平準化スコアという4つの項目から、1商品あたりのCFPを出しています。私たちが計算できたのは、Allbirdsさんが計算ツールをオープンソース化してくださったからです。今回全ての自社商品のCFPを算出したので、本日(2月10日)から各商品の数値を公開します

 

企業がカーボンニュートラルに取り組む意義

深井)それではトークセッションに入りたいと思います。まずは企業がカーボンニュートラルに取り組む意義というテーマから話していきたいのですが、Allbirdsさんではどのような意義を感じられていますか?

竹鼻)
個人としてはこのままでは地球が危ないという危機意識があると思います。今日も南岸低気圧により雪が降っていますが、これって要は台風が冬にやってきている状態だと専門家の方が話していました。異常気象が当たり前になっている現状に危機意識を持つと同時に、
石油業界の次に地球を汚染する業界にいる自分たちには、行動を起こす使命があると思っています。

深井)実害が出始めていますよね。カポックはインドネシアに生えているのですが、インドネシアって今度首都が移るんですよね。地盤沈下と温暖化の影響だそうですが、要は先進国が出してきたCO2排出の影響が途上国に出てきてしまっている。それを無視して、ビジネスをしていくわけには行かないと思います。

竹鼻)最近、取材を受けると「サステナビリティと商業的成功は両立しないものだと思いますが、どう考えていますか?」と聞かれることがありますが、その考え方は根本的に間違っていると思います。サステナビリティを追求すること自体がビジネスになる。ヨーロッパでは何年も前から、サステナビリティを考えて作られていない商品は売れない社会になっています。Allbirdsの創業者の二人も「地球に優しいことがビジネスになる」と考えたのでしょう。商業的成功を考えても、企業がカーボンニュートラルに取り組むことは大事だと思います。

深井)一番わかりやすいのは炭素税の話ですよね。今まで社会にいいことって「なんとなくいいこと」が多かったと思うのですが、どれだけいいことかを明示すれば評価されうる世の中になってきている。その一つがCFPですが、今日本で考えられている炭素税ってとても低くてフランスの20分の1ぐらいだから、導入されても大したことないと思われている。でも、来年にはフランスや欧米諸国と同じぐらいまで引き上げるという発表が出るそうです。要は、高い炭素税が出てくることで、これまで「なんとなくいいこと」とされていたCO2排出を下げる取り組みに、経済的なメリットが生まれるわけです。

カポックは植物由来の素材なので、水鳥の羽根を使うダウンと比べた時にCO2排出量が圧倒的に低い。だからもし、原料の値段が同じだったとして、炭素税が下がるからという理由でカポックを採用する企業が現れるのではないかと思っています。Allbirdsさんがマッシュルームで作るビーガンレザーに取り組まれているのも、社会的な変革を見据えているからなのでしょうか?

竹鼻)
そうですね。未来を見据えた時、ビーガンは一つの柱になります。レザーに挑戦しているのは、今までのファッションの楽しみ方はなくならないと思うから。
生活する上で欲しいものは妥協せず、その上で環境に良いものを買いたいというのが消費者の心理だと思うので、数年前からビーガンレザーに投資しています。

深井)たしかに、最近代替肉が盛り上がっているのも動物愛護、環境保全といった利他的な特徴だけでなく、体質改善といった利己的なウリがあるからだと思っています。Allbirdsさんの靴も、洗える、軽い、履いた瞬間の感動みたいな利己的な魅力も大きいですもんね。

竹鼻)
自己犠牲してまで地球のことを考えるのは難しい。自分の生活のクオリティを上げながら地球のためになればいいと考えるのが当たり前だと思うので、その視点は大切ですよね。

 

CFPを算出して見えたこと

深井)せっかくなのでCFPの話に戻りたいと思いますが、今回私たちは平準化スコアというものを導入しています。例えば、素材のCFPを算出したいと思った時に、リサイクルのポリエステルを使っていても、チップごとに排出量が違う。また、製造にかかる電力を出すにも契約している電力会社によって排出量が変わってしまう。そんな正値として出しづらいものを平準化スコアとして取り入れています。私たちはここを考えるのが一番難しかったのですが、Allbirdsさんはどのあたりで苦労されましたか?

竹鼻)
Allbirdsでは、商品のプロトタイプレビューの段階から、CFPを見ているんですね。CFPの値次第では商品化できないケースもあります。なので、計算段階というよりは製品づくりの段階での苦労が今は大きいかもしれません。

CFPの算出って、自分たち自身に「今後これ以上悪い仕事はできない」ということを詳らかにしてしまうことだと思うんです。今年出した商品の改良版を来年出すとして、正当な理由なくCFPが増えてしまったらそれは出せないですよね?そういう意味でも大変ではありますが、企業が自身に課題を課すということは、CFPを取り入れる意義でもあると思います。

 

Allbirdsが計算ツールを公開した背景

深井)ちなみに今回、計算ツールをオープンソース化してくださったのはどうしてだったのでしょう?結構手間がかかったと思うのですが...

竹鼻)
Allbirdsの基本的な価値観につながるところですが、
自分たちだけで囲っていては世界規模で地球を変えていくことはできない。だからいろいろなブランドと手を組んでさらに声を大きくしていけば、輪を広げていけると思ったんです。ぜひ積極的に使っていただきたいというのが私たちの考え方です。

 

深井)私はAllbirdsさんの「ビジネスの力で、気候変動を逆転させる」という想いにとても共感しています。本当に世界と向き合っていくためには、ビジネスの力を最大限活用する必要があると思うので、そんなAllbirdsさんが公開してくださったツールを使って自分たちでも計算できたことは、非常に大きな契機でした。

竹鼻)
他のブランドと協業することはもちろん、支え合うことも大切だと思います。今サステナビリティって、アップサイクルやリサイクル、適量生産などいろいろなやり方があるじゃないですか。それぞれ長所と短所があるので、お互い足を引っ張り合うのではなく、支え合い褒め合える関係性になれたらいいなと思います。

深井)CFPの計算も私たちだけではとても大変でしたが、Allbirdsさんの簡易なツールで計算式を理解できたからこそ、自分たちでも計算することができました。手を取り合える関係性ができたことは、ありがたい限りです。

 

質疑応答

【質問1】
温室効果ガス排出、地球温暖化以外にアパレル業界で向き合っていかないと行けない課題、見える化すべきポイントは何とお考えでしょうか?

深井)壮大なテーマですね。一つあげるなら、私たちの世代は衣食住の中でも衣のリテラシーが非常に低いことに課題を感じています。食だとオーガニック食材や自分で作ることに興味を持つと思うし、住もリフォームやDIYなどに関心を持つ方が多いと思います。でも、衣に関してはそもそも教えられる場がないので、どうやって作られているかを知っている人が少ない。

そのため、私たちは洋服が届く全ての工程を見せることを大事にしています。糸や織物はどうやって作られるかということを、産地の人ではなくブランド側が少し引いた視点から語ることで、衣との距離を近つけられるのではないかと考えています。

 

【質問2】
KAPOK KNOTでCFPを算出・見える化したことで良かったこと、新しく見えてきた課題はなんでしょうか?

深井)良かったのは、自分たちがやっているビジネスが見える化できたことです。いわゆるソーシャルビジネスって社会性と事業性が大事だと言われるんですよね。ただ、事業性は評価できても社会性って目には見えないのが課題だったんです。今回のCFP算出は社会性を定量評価できたということだと思うので、自分たちがやっていることを自信を持って良いと言えるようになったのは、大きいと思います。

課題感として大きいのは、来年以降どうやって減らしていこうかということ。策はまだ明確には見えていません。ただ、今ちょうど植物由来の素材だけで作る「土に還るコート」というアイテムを試作していて、この開発はCO2の削減につながってくると思っています。

 

【質問3】
世界規模の気候変動問題を解決するには、たくさんの企業を巻き込む必要があると思います。すでに行っている周囲のブランド、企業を巻き込む施策のなかで効果的だったものをお聞かせください。

竹鼻)一番大きかったのはアディダスさんとの協業です。私たちだけでは声が届かなかった多くのお客様に声が届きましたし、たくさんの商品を作ったことで排出量削減のインパクトも大きかったと思います。

深井)ただコラボするだけだったら実現できるかもしれませんが、その上でどうやって効果的なプロジェクトに昇華していったのでしょうか?

竹鼻)
お互いの手の内を見せ合ったことが良かったと思います。アディダスさんと私たちの強みを見せ合うことで、どうやったら一番軽く、CFPの少ないランニングシューズを作れるのかというところを追求することができました。同じ目的を持っているブランド同士、良い関係性で協業できたことが嬉しかったです。

 

【質問4】
CFPを計算したことで、最も排出量削減のネックになっていることが分かったのはどの部門でしょうか?また、その部門に対して次の施策を予定されていたら教えてください。

深井)KAPOK KNOTでは素材でした。Allbirdsさんもそうですか?

竹鼻)
私たちは素材、製造、輸送が多いですね。

深井)素材の排出量を下げるために考えているのは脱石油由来。植物由来や地球に優しい素材に変えていくことで数値を下げられると思っています。課題が大きいのは、製造です。電力を再生エネルギーに変えようと思っても、工場が古くて変えられなかったり、そもそもブランド自前の工場ではないので、全部一気に変えるのは難しい...今後工場と話しながら進めていきたいと思います。

竹鼻)
Allbirdsでは昨年すでに達成した取り組みですが、輸送手段のうち80%以上を船での輸送にしました。エアー(飛行機)での輸送はCFPが非常に高いので、船に変えるだけでかなり下げられたと思います。

素材の部分は再生可能な素材に変えていく、製造の部分は再エネの工場を使う、輸送では地球に優しい手段を選ぶなど、全てのプロセスにおいて変えていく努力が必要だと思いますね。

深井)やれることはたくさんあるということですよね!

竹鼻)
はい、だからまずはどこに大きな問題があるかを知るために数値化が必要なんです。どの部門に注力したら最も大きなインパクトがあるかを探ることが、最初の数年で一番大切なことだと思います。

 

* * *

KAPOK KNOTでは今回の算出を機に、全アイテムのCFPをショールーム店頭の商品タグと商品ページにて開示いたします。

 

ご興味をお持ちいただけた方は、こちらより商品一覧をご覧ください。

世界的に気候変動の影響が出てきているなか、みなさまの洋服選びにおいてKAPOK KNOTのCFP開示が選択の一助となることを願っています。